ここでは食物に含まれる人工の化学物質を人工化学物質と総称する。人は食物から栄養素を抽出し、体内のシステムを用いて代謝を行う。そして生命エネルギーや体組織を作り出す。代謝は化学反応である。代謝には様々な物質が関与しており、このシステムの働きには未知の部分も多い。自然界の食物には、このシステムの働きを阻害する物質も存在しており、それらは毒物と呼ばれる。自然界の毒物に対しては、人類史上の長い体験から回避方法が得られている。一方で、近年の科学技術の発達に伴い、ヒトが人工的に作り出した化学物質は安全性が十分に担保されているわけではない。特に経済効率上から採用が進んでいる食品への化学添加物には危険性が指摘されているものもある。食品に含まれる人工化学物質は、保存料、着色料など加工工程で添加される物質の他に、生産過程で投与される成長ホルモン、抗生物質、農薬、さらに流通過程で混入する殺虫剤、防カビ剤等、多岐にわたる。これらの化学物質の悪影響は定量的に把握されている訳ではないが、多様な物質の相互反応や長期に亘る摂取の影響など未解明の部分も多い。
代表的な農薬として、グリホサートとネオニコチノイド系農薬がある。グリホサートは除草剤であり、グリホサート耐性を持たせたGM植物との組み合わせでも使用される。また小麦などのプレハーベスト用にも使用される。グリホサートは、発癌性を持ち、また自閉症などの発達障害を引き起こすことが報告されている。グリホサートは、米国を中心に小麦や大豆の生産に多用されている。米国、カナダから輸入された小麦で作られたパンからはグリホサートが検出されている。ネオニコチノイド系農薬は昆虫の神経伝達系を阻害する機能を持つ殺虫剤であり、イネの他、キャベツ、白菜などの他、林檎などの果実にも使われる。根、茎、果実など植物内部への浸透性が高く、洗っても落ちない。人に対する無害性が証明されている訳ではなく、ネオニコチノイド系農薬の使用量の増加に対応して子供の発達障害が増加しているという報告もある。人体耐性の基準値を下回るから安全という議論があるが、そもそも安全基準の信頼性が揺らいでいる現状では当てには出来ない。長期の体内蓄積や様々な化学物質の複合効果などを考慮するなら、人工化学物質の摂取は極力避けるのが望ましい。