ヒトの身体にとって健康であることが重要である。健康とは生命状態が十全であることを意味し、それはヒトにとって、身体を作る数十兆個の細胞が、個々の機能を適正に発揮して、自己実現の基盤となる生命活動を維持・継続することである[1]
全身の細胞は、夫々の役割に応じ生命に必要な物質と活動エネルギーを作りだす。各細胞の活動は、呼吸、循環、代謝という全身システムにより支えられている。呼吸とは、栄養素(食事)を含めて、体外からの物質の摂取と排出を、細胞レベルで、意味する。循環とは主として血管・リンパ系による全身に亘る物質の搬送であり、代謝とは、生命活動に必要な物質を作る化学反応の総称である。健康には、この呼吸(Respiration)、循環(Circulation)、代謝(Metabolism)というRCMサイクルがうまく機能することが必要である。ヒトの身体は、内部機能と外部機能の二つの構成を持つ。内部機能は身体の維持・成長を推進する。具体的には、身体は環境から取り入れた資源を用いてエネルギー源(ATP)を生成し、それを利用して自己の再生産を行っている。身体の中では、呼吸、循環、代謝という三つの活動があり、様々な臓器がこれに関連して働いている。呼吸は、外界から酸素や栄養素を体内細胞へ取り入れ、生命活動の結果発生する二酸化炭素や老廃物などの不要物を体外へ排出する活動である。循環は、呼吸に伴う物質の運搬を行う活動であり、代謝は、身体の維持・成長やエネルギー生成のための化学反応である。
ヒトの身体を構成する細胞は、代謝により常に更新されている。また、ヒトの身体はホメオスタシス機構を持ち、その一つである免疫システムは侵入した微生物や不良細胞など、体内の有害物を排除する機能を持つ。内部機能の活動は、生命体として必須のものであり、無意識下で遂行される。外部機能は、外界への働きかけのために発達してきた。具体的には、ATPをエネルギー源とし、感覚器官と運動器官を用いて食物採取や危険回避など、生存に必要な活動を行う。
ヒトは、生命活動を通じて様々な要因により身体に損傷を受ける。ヒトの身体は傷害を治す能力(自然治癒力)を持つが、生存が長期に亘るに伴い傷害が蓄積し、老化の進行を招き死に至る。
ヒトの身体は、数十万年に亘る生活を通じて環境に適応してきた。ヒトの歴史の大部分は、狩猟採集を主とする非定住生活であり、身体もこの生活様式に適応している。一方でヒトは、自らの都合に合わせて世界環境を改変してきた。この改変は、ヒトの繁栄に大きく貢献した半面、生活習慣の急激な変化をもたらし疾病を生み出している。健康維持には休憩の取り方を含め、適切な身体の使い方が重要である。

[1] 土肥眞、病気になりにくい身体をつくる、マスブレーン2012