芸術とは「単なる必要性を超えた何らかの美的意識の表れ」と定義できる。ヒトの芸術は数十万年以上前に始まったと思われる。70万年前に作られた石器は、左右対称の美しい形状を持っているし、南仏テラアマタ遺跡では38万年前のオーカー製のクレヨンが発見されている[1]。ホモ・サピエンスの活動が活発になった数万年前からは、洞窟壁画を始め、装飾用のビーズやペンダント、人物像等、絵画や造形物が多数作られている。
同様に音楽についても、約2万年前に作られた鳥の骨のフルートが発見されていることから、先史時代から存在したことが確認できる。また、洞窟壁画は、音響効果が良い場所を選んで描かれているという指摘もある。さらに、その音響効果から壁画洞窟全体が一大管楽器であるという仮説もある。文明の程度に関わらず、芸術は全てのヒト集団において存在する。芸術に関わる感性は、他から教えられなくても全てのヒトが生得的に持っている。芸術は、ヒトの本性に関わるものであり、ヒトの進化と共に発達してきたと思われる。


[1] 横山祐之、芸術の起源を探る、朝日選書1992