現代の食品は商品性(保存、味覚、見栄え、価格など)向上のために様々な添加物が使用されている。これらの添加物は人体に対する安全性が評価され、政府機関などの規制を満たしているが、人体への安全性が十分に保障されているわけではない。ヒトの生命メカニズムには未知の部分も多く、食品添加物の想定外の有害性が確認される場合も多い。それゆえに健康を優先させるならば、食品添加物の回避が必須となる。すなわち食品の選択が重要である。野菜であれば、無農薬栽培の野菜や果物、輸入植物であれば防カビ剤不使用のもの、肉類は牧草飼育で成長ホルモンや抗生物質を使わずに育てた家畜や家禽、魚介は養殖ではなく汚染が少ない海域での天然もの、などを選択することが、高価格ではあるが、可能である。無添加食品を供給する生産者から購入することで、安全な食品の安定供給に繋がるとも言える。安全な食品入手の究極の選択は自給自足である。自分で野菜を栽培・収穫することは、少量であれば実現可能である。

 加工食品は、食品添加物を多量に含むことが普通である。工場での大量生産では、品質保持のため食品添加物の使用が一般的となる。一方、生の食材を自分で調理すれば添加物が無い食品が得られる。また保存料不使用の食品(例えばパンなど)を購入した場合は、真空状態で保管することで、ある程度の期間、保存が可能になる。また調理は数回分をまとめて作り、真空容器に保存することで毎回調理する手間を回避できる。

 食品添加物の無い食事は、自然食品の提供者から購入する、自分で収穫する、自分で調理する、ことで可能になる。この場合、食材の制約、栽培や調理の時間や使用できる器具の制約があるため、自然食事に特化した食事(食材入手から消費までを含む)のやり方が必要になる。具体的には、供給者の選定、短時間調理用のレシピ、保存方法、家庭菜園、粗放農法などである。

 有史以前からヒトは食の安定的入手に取り組んできて、現代社会(少なくとも日本)ではほぼ達成されている。しかしながら、それは食の安全性との危ういバランスの上に成り立っている。分業化され大量生産される現代の食文化は、安全性の毀損という食本来の目的を踏み外した状況に陥っている。ヒトという生き物の解明が進み、その本性が明らかになりつつある現代は、食の意味と文化を見直すべき時期と思われる。これからの食文化のキーワードは、安全な食材の選択、自家調理(保存を含む)、自家栽培の三つである。